フィンランド大使館Twitterの“自由すぎる”運用の裏側


在日大使館といえば、日本と母国をつなぐ外交の窓口。そのイメージは堅く、マジメで、少しとっつきづらい、といったところだろう。だが、そんななか独特の存在感を示しているのが、北欧の国・フィンランドだ。公式アカウント「駐日フィンランド大使館(@FinEmbTokyo)」は、お堅い政府機関というイメージを打ち破る個性的な発信で、13万に迫るフォロワーを獲得している(2017年3月8日時点)。

■「サポートするけど口は出さない」フィンランドの羨ましすぎるビジネス文化
2011年に開設されたフィンランド大使館のTwitterアカウント。当初から大使館らしからぬ、親しみやすいつぶやきで注目を集めてきた。

たとえば、ひらながにするとかわいいフィンランド語「もい!(日本語でこんにちは)」「もいもい!(さようなら)」「にゅっと!(なう)」などを駆使したツイート。


あるいは前大統領のタルヤ・ハロネン氏をネタにしてしまうなど、他国のアカウントに比べ自由な雰囲気がある。


なお、2012年からは公式マスコット「フィンたん」がつぶやくというスタイルをとっているが、その正体は国家機密とのこと。そのため、運用をサポートする大使館職員の方々にお話を伺った。

―― ゆるいツイートが特徴的ですが、これは開設当初から?

「そうですね。まずは『ハードルが高く、なんとなく怖い』っていう大使館のイメージを壊すところから始めました。それで、ゆるく、やわらかく、ちょっとおもしろいネタを発信していこうと。最初のうちはどんなネタが受けるか試行錯誤で。国によってはツイート一つひとつを本国に確認してから発信しなくてはならないようですが、私たちの場合はこちらの判断でどんどん載せていました。スピード感があり、アクティブに更新していたところもよかったのかなと思いますね」

―― でも、本国から怒られませんか?「勝手にイメージを壊すな」って。

「Twitterに限らず、仕事について現場の裁量権が大きいので、怒られることはないですね。自由にアイデアを出して、良いと思ったらやってみろ! という感じです。それは、フィンランドのお国柄といえるかもしれません」

―― いちいち上司に確認していたら、つまらなくなっちゃいますもんね。

「個人を信頼してもらえるのはありがたいですね。逆に、細やかな経過報告は必要ないというスタンスです。たとえば、大使館で業務メールを送る際は、上司のアドレスをできるだけCCで入れないようにと言われています。担当者間のやりとりだけでOK。最初に仕事の大まかなやり方だけ確認したら、あとはお任せ。ただ、困ったり悩んだりしたら相談してねと言ってくれます」

―― 上司の鑑! それって現場が最高にありがたいやつですね。

「2010年にフィンランド本国が『デジタル外交に力を入れよう』という方針を打ち出し、世界中の大使館でSNSを駆使した広報活動を行うとの通達がありました。でも、国によって普及しているSNSもウケるネタも違うから、どのツールを使い、何を発信するかは現地の担当者が一番心得ているだろうと。だから、サポートはする、でも余計な口は出さない、という感じですね。仕事はやりやすいです」


■フィンランド人と日本人は似ている?
―― そこは「報・連・相」を是とする日本と随分異なる気がします。

「でも、日本とフィンランドって共通点も多いと思いますよ。じつはフィンランド人ってシャイで、自己アピールが下手なんですよ。たとえば、フィンランドは『お母さんに優しい国ランキング』で毎年1位、2位を争っていますし、『報道の自由ランキング』も1位。誇らしいことだからアピールすればいいと思うんですけど、フィンランド人外交官のなかには照れて嫌がったりする者もいますね」

―― なんとも慎ましいですね。日本人も元来はそれに近い気質のイメージですもんね。

「ガツガツしたアピールに抵抗があるんですね。だから、どうしても『自虐』の方向に走る傾向が…(笑) でも、そんな自国民への理解がとってもユーモラスなんです」

―― 自虐ネタ好きとは意外でした。確かに、フィンランド政府観光局のサイトにも「内向的なフィンランド人は自分の靴を見ながら他人と話す。社交的なフィンランド人は相手の靴を見ながら話す」というジョークがあると書いてありました

「最近、本国が『フィンランド公式絵文字』を作ってTwitterでも何度か紹介しているんですけど、それも“そっち寄り”のネタが多いです。たとえば、フィンランドには『自宅でパンツ一丁で酒を飲んでいる状況』を表す言葉があるんですけど、それを絵文字にしちゃったり、『凍った棒を舐めて、舌がくっつき剥がれなくなる』というちょっとおバカな“あるあるネタ”を採用したりと、どこか自虐的ですよね。でも、それがフィンランド人は楽しいし、実は誇りだったりするんですよ」

―― 日本でフィンランド大使館のTwitterがウケる理由が、なんとなく分かった気がします。じつはこんなに親しみやすい国だったとは!

「北欧というと、ファンタジーな雰囲気とか、美しい、かわいいみたいなイメージがあるかもしれませんが、フィンランドって北欧の中で唯一、色んな国に占領されたり、貧しい中で頑張ってきたりした歴史を持っているんです。そういう反骨心みたいな精神をフィンランド語で『Sisu(シス)』といいます。ガッツとか、根性と訳せばよいでしょうか。戦後の歴史的背景や考え方も、日本と親和性があるのかもしれません。それはTwitterでも発信していますし、好意的に受け入れていただいているんじゃないかと。これからも、フィンランドの意外な一面についてもTwitterで紹介していきたいと思っています」

(榎並紀行/やじろべえ)

【関連リンク】
■駐日フィンランド大使館 (@FinEmbTokyo) | Twitter
https://twitter.com/finembtokyo

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